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出版・SP 2017/03/15

あの時、こう撮った(2)

森島吉直
森島吉直
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こんにちは。カメラマンの森島です。

今日は3月15日。あと半月もすると桜景色が楽しめると思うと一年早いなぁと思います。
今年はどこに桜を撮りに行きましょうか。

さて、今回の投稿は数日前から配布が始まった「静岡鉄道沿線GUIDE BOOK 2017年版」の表紙撮影の舞台裏です。

2017年版の表紙は新型電車A3000形の新色パッションレッドと昨年から走り始めたクリアブルーとの並び写真が採用されました。
撮影前の編集からの要望はパッションレッドの走行写真。できれば2016年デビューのクリアブルーと一緒に写っているものが欲しいとのこと。
この要望を受け取ったのは、撮影のひと月以上前の1月のことでした。

 

さて、どんな表紙写真にしようかな。
まずは表紙写真として使える条件を整理しましょう。こんな感じかな?

 

・被写体はパッションレッドのA3000形
・表紙のデザイン上、写真スペースは決められているので画面いっぱいに撮ってしまうとうまく誌面に収まらないかも。それと名所、旧跡などの丸いアイコンの位置も確認が必要。これはデザイナーと相談しよう。
・パッションレッドは鮮やかな赤色。その赤色をちゃんと撮るには、日光がしっかり当たった状態で撮らないと。日陰や逆光線では赤色がくすんで写ってしまいます。
・おそらく一発勝負の撮影になるから事前に撮影場所を決めなければ。
・問題は・・・クリアブルーとの並び・・・車庫で撮影したら走っていない絵になるわけだから、本線上で並ぶ、つまりすれ違うチャンスはあるのかどうか。これは静岡鉄道広報のKさんに聞いてみよう。

 

と、いうことで最初にロケハン(※1)を行うことにしました。
静岡鉄道静岡清水線は地図で見ると新静岡駅から北東方向に走る路線です。つまり、カメラに向かって走ってくる列車の正面に光が当たる条件は、新清水行きなら午前中、新静岡行きならば午後が良いわけです。まずは、その点を頭に入れて地図で撮影に適した場所を探してみます。
結果、数カ所目星をつけて新清水駅から歩き始めました。

歩いて見ると様々なものに出会います。中でも狐ヶ崎駅は静岡民謡の「ちゃっきり節」誕生の由来の説明版があったり、谷津沢川水路橋という線路の上を川が流れる日本でも珍しい場所があったりして、これは別の媒体の取材の時に使えるかも。などとメモして行きます。
もちろん、目星の場所でカメラを構えて、どのレンズを使えば良いかとか、列車がどの位置に来たらシャッターを押せば良いのかを確認します。

この日歩いた距離は14km。寄り道したからかな(笑)
本職の鉄道カメラマンともなれば、これらの情報は既にあるはずで僕はちょっと遠回り。
けれど、40年ぶりに更新された新しい車両のひとつを撮影できるチャンスはもうないかもしれないと思うとつい力が入ってしまいますね。通勤で使っているから愛着もあるんだよね。

 

あくる日、広報のKさんと連絡を取りロケハン結果をお伝えしながら、撮影する列車のダイヤを確認します。そこでわかったことは、このようなことでした。

・締め切りまでにパッションレッドは1日しか走らないこと。
・その日は2往復すること。
・クリアブルーとすれ違うタイミングがあること!
・すれ違う場所は、普段運転されている列車同士がすれ違う場所とは異なること。
・パッションレッドは営業運転ではないから、設定された時刻表通りに走るとは限らないこと。

 

これを受けて、今度は下のようなダイヤグラムを作ってみます。

縦軸に駅名、横軸が時刻を表記するグラフで、その列車が今どこにいるかが一目でわかるものです。パッションレッドの赤線とクリアブルーの青線が交差するポイントがすれ違いの場所。
果たしてすれ違う場所は撮影に適した時間と場所なのだろうか・・・
そして、そこで撮影した写真はちゃんと表紙に収まるサイズの画像にできるのか・・・

 

すれ違いのベストタイミングは本当に本当に一瞬です。何度も通わないと撮れないことの方が多い。
でも、やれるだけやろう。
すれ違いが予定されている場所に出向きテスト撮影を行うことにしました。

この写真をデザイナーに渡して表紙デザインに当ててもらいます。ステンレスボディーの1000系は直射日光が当たると強く光るから飛ばないように撮ると周りが暗くなってしまうこともわかります。これは車両の角度と光の当たり方の問題です。パッションレッドはここまで光らないとしても露出は少しアンダーめ(暗め)の方が確実でしょう。この段階では名所アイコンがちょっと大きいから調整してもらえるか確認します。

こうしてロケハン結果と事前情報を元に当日の撮影予定を組んで行きました。
本命はすれ違いですが、サブカットでパッションレッドだけの走行シーンも狙うこととしました。

並行して機材も準備します。ロケハン時とカメラ、レンズは同じで大丈夫なのですが、今回は路上から撮影することになったため場所をとる三脚は使用せず写真のような道具を自作してカメラをガードレールに固定。これならば、通行人の邪魔になることも少ないでしょう。


撮影当日。
草薙駅。
「やっぱり運行時間は前後するのですね。。。すれ違いは難しいですね。」
「・・・時刻が変わったぶん、もしかしたら・・・」
と広報のKさん。

ファインダーの中に新静岡行きホームに入ってくるパッションレッドが現れました。
予定した位置に列車が来たところで予定通りのシャッターボタン。
列車は時刻変更が1分程度あったようです。そのときに!

「後ろから入って来ます!」
Kさんの興奮気味の声が確かに聞こえたはず。

(このレンズでは長さが間に合わない!!間に合うか!?)
青い車体がパッションレッドを隠している数秒間、ズームレンズのついた予備カメラに持ち替えて再びファインダーを覗いた時、その列車は静かに動き始めました。

 

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下調べをし、予定を組んで、機材を準備して。
万全の体制と思えても、上手くいかないことがあります。
でも、間違いなく運が味方することもあります。

目的があって描いたものをモノにできる可能性が見えるなら、やれるだけやってみたい。
嬉しくて爽快な撮影を創るのは自分自身。
次のチャンスも頑張ります!

 


-おしらせ-
今週末の3月18日に静岡鉄道長沼車庫で引退する1000形(1002+1502編成の)のさよならイベントがあります。

「さよなら撮影会」では、長沼車庫でA3002号と並べて展示があります。

詳しくはこちらをご覧ください。
https://machipo.jp/event/4103

 

※1 ロケーションハンティング=下見のこと

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